2021S 経済法 中間小テスト2
2021-06-04
【1】か【2】のいずれかに解答してください。(字数は特に指定しませんが、短く答えることができる問題です。)
【1】令和3年司法試験「経済法」第1問のうち、Y15のみについて、解答してください。それ以外の部分は不要です。Y1〜Y15が事業者であることには触れる必要はありません。
(pp12-13)
【2】商品αについて競争関係にあるA・B・C・D・Eがいた。AとBが合併を計画したが、公取委はこの合併がもたらし得る弊害を軽視したため無条件のクリアランスを行った。合併後、ABとCとDは、競争者数が減少したことに油断し、商品αの価格に関する意思の連絡を行った。Eは、意思の連絡には参加しなかったが、価格が高止まりしているので同様の高い価格で商品αの販売を行った。①AとBの合併、②合併後のAB・C・Dの行為、③Eの行為、のそれぞれについて、それぞれ1文で「①は、・・・。②は、・・・。③は、・・・。」というように、独禁法に違反したか否かを述べてください。なお、公取委が①を軽視したというのはフィクションである。
解答用Googleフォーム
(締切を過ぎたのでURL削除)
ECCSクラウドログイン必要
送信期限
6月6日(日)13:00(13:00ちょうどは不可)
十分余裕を置いているだけであり、短時間で終えられる問題です。
6月9日(水)に解説します。【2】→【1】の順に解説。
【2】
「公取委が①の行為に対して無条件のクリアランスを行ったことが適法性に影響を与えるかわからなかった」
①「合併の時点で、不当な取引制限(2条6項)に該当する」
「まだ、違反要件ごとの違いをつかめていません。①と②のABの行為は、入札談合と同様に考えてもよいものなのでしょうか。
③
「③について何も思い浮かばなくて書けなかったのですが、Eだけお咎めなしというのは違和感がありました。」
表現としては、「(行為が)2条6項に該当する(ので3条に違反する)」が正しい。
解答例
①は、現に合併したところ競争者数が減少したことに油断して意思の連絡が生じたほどであるから、合併後のABとCとDが協調的行動を取る可能性が高いことが合併前に予見できたと考えられるため、15条1項1号に違反する合併であったと考えられる。
②は、ABとCとDが意思の連絡を行っており、そのような場合には原則として弊害要件も満たすから、2条6項にいう不当な取引制限に該当し3条に違反したと考えられる。
③は、Eは意思の連絡に参加していないので、行為要件を満たさず、2条6項にいう不当な取引制限に該当しない。
【1】
答案が長くなったのは無理もない。
合意時説
技術力の高いY1〜Y13、隣接県で参加可能性のあるY14・Y15が全て参加。
現にY1〜Y15が全て落札。
離脱
窺い知る
Y1のみしか知らないことをどう評価するか
いくつかの点
「本件は入札談合の事件として、基本合意と個別調整があり、Y15は個別調整に参加しなかったように見えることなどから、基本合意だけでは「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ことはないであろう。」
競争の実質的制限の成否
「価格評価点が配点の8割を占めるとはいえ、技術評価点も2割と相当の割合を占めているため、技術力の高いY1ないしY13が落札者となる可能性が高かったといえる。」
「上記の状態をもたらし得るものであった。・・・上記の状態をもたらしていた。」
当たるか否かの発想
「この点について、競争の実質的制限は、本件合意時に既に形成されており、その後に行われる個別調整は成立要件ではない。そのためY15が本件合意に応じた時点で、不当な取引制限にあたる。」
「したがって、Y15による離脱は認められないと解する。・・・以上より、Y15には、不当な取引制限が成立すると考える。」
「合意に途中参加した者の「不当な取引制限」成立時期について、自らの合意時(参加時)なのか、他の参加者の従前の合意時なのかが分かりませんでした。回答は前者にしました。」
離脱をどの項目で論ずるか
「合意からの離脱を、不当な取引制限の終了として独立して述べるのか、「共同して」の中で触れるのか悩んだ。」
「離脱について、「不当な取引制限」の全要件充足後に検討するのか、「共同して」の中で成立時期とまとめて検討するのかが分かりませんでした。回答は前者にしました。」
shiraishi.icon本来は、それが問題になるが、あまり気にせずに議論されている。
解答例
(解答例であるので比較的丁寧に書いている。もう少し簡潔でもよい。)
Y15の行為が2条6項にいう不当な取引制限に該当したか否かを検討する。
Y15は、Y1〜Y14という他の事業者と、Y1を介して間接的にではあるものの、意思の連絡をし、相互拘束をした。
Yらの行為によって、X県が発注する本件各工事の取引分野において競争の実質的制限が発生したかを検討する。
競争の実質的制限は、入札談合事件では、落札者・落札価格をある程度自由に左右できる状態に至っていることを指す。
本件各工事では、技術評価点を考慮する総合評価落札方式が採用されることとなっており、X県に所在する技術力の高いY1〜Y13が本件合意に参加している。したがって、かりに実行すれば落札者・落札価格がある程度自由に左右される状態に至ったと、合意時に予測できたと言えるので、上記の状態をもたらし得る状況にあった。
現に、Y14とY15が必ずしも十分には参加しなかった状態においても、実際の落札者・落札価格は、20件中19件で、合意参加者が予定したとおりとなった。
以上によれば、本件では、昭和59年の石油カルテル刑事事件最高裁判決が示した合意時説の考え方により、合意時に不当な取引制限が成立したと言える。Y15については、Y1に対して参加の意向を伝えた時点で、不当な取引制限が成立した。
Y15は、その後の行動によって、離脱したと言えるか。
一部の者の途中離脱については、減免申請が関係しない事案においては、岡崎管工事件東京高裁判決が示した「離脱者の行動等から他の参加者が離脱者の離脱の事実を窺い知るに十分な事情の存在が必要である」という基準が参考となる。
本件のY15は、Y1に対して離脱の事実を明示したのみであり、Y2〜Y14に対しては伝えていないが、合意の成立時においてもY1のみが窓口となっていたことや、Y15の翻意が本件合意への大きな脅威となることはないと考えられていたことなどからみて、Y1に伝えたのみで離脱が認められると評価してよいように思われる。
まとめると、Y15は、Y1に対して呼び掛けに応じる意思を表明した段階で不当な取引制限に該当する行為を行っており3条に違反したが、翻意する旨をY1に伝えたことにより違反は終了した。
課徴金
「本件で、課徴金算定の終期が始期に先立つ形になってしまったのですが、このような場合課徴金は課されないのでしょうか。」
「終期が始期に先立つため、課徴金が課されることはないと考える。」
Y14は「相互に」を満たすか